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出生の秘密 ①

Auteur: 紅城真琴
last update Dernière mise à jour: 2025-05-21 20:12:39

梨華も大樹も父さんも帰った病室で、母は眠っている。

ここは救急病棟の特別室。

広さは12畳ほどあり、ベットの他に応接セットが置かれていて、さらに奥には引き戸で仕切られた和室と、ミニキッチンやお風呂も備え付けられている。

高い個室代をとるだけあって眺めも最高で、今は窓からは星空が見える。

私は部屋の灯りを消すと、応接セットのソファーに横になった。

「うわー、綺麗」

思わず声に出た。

子供の時に見た満天の星を思い出し、あの頃に戻れたらどんなに幸せだろうと思ってしまう。

「樹里亜、起きてるの?」

「えっ?」

寝ていると思っていた母に声を掛けられ、驚いた。

「母さん、寝られないの?」

布団や枕が変わると寝られない人は多いから。

「ちょっと来て」

母はベッドに身体を起こして座っていて、ここに来てとベッドを叩いた。

私は母の近くに行き、ベットに腰をおろす。

「どうしたの?」

「あなたと、少し話がしたいのよ」

「話ならいつでも出来るから、今は休んだほうがいいわ」

「何言ってるの。いつも忙しくて、家にも帰って来なくて、いつ話せるのよ」

はああ、確かに。

そう言われてしまうと返す言葉がない。

「わかったわ。何?」

私はおとなしく母の話を聞く事にした。

「我が家は、樹里亜にとって居心地が悪いのよね?」

「そんな事は・・・」

改めて言われると答えにくくて、言葉を濁した。

「なぜなの?」

「それは・・・」

一言で説明するのはとても難しい。

「私は、樹里亜も梨華も大樹も同じように育ててきたつもりよ」

それは、わかっている。

父も母も平等に扱ってくれた。

「親戚達がうるさいのは確かだけど、なぜあなたはいつも逃げるの?」

私だって好きで逃げているんじゃない。

私は父と愛人との間に生まれた子。

母にとって憎むべき相手の子。

愛されてはいけな子
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